「異文化映画」という分野は、実はドイツ映画の教科書にはないと思いますが、
ここ10年ほど、ドイツ人以外の監督が撮るドイツ映画が話題になったり、
そのテーマも異文化との邂逅を描いたりしている作品が
少しずつ増えてきたように個人的に感じていて、
ちょっとこのカテゴリーでまとめてみたいと考えました。
ドイツという国はもともと、フランス、イタリア、オーストリア、スイス、ポーランド、デンマーク、チェコ・・・など合計9つの外国と接していることから、
一定以上の教育のある人々の異文化に対する意識は、
かなり高い状況にあります。
さらに、1970年代から、トルコ、旧ユーゴスラヴィア諸国などから、
ガストアルバイター(Gastarbeiter)、
つまり外国人労働者を多く受け入れてきた歴史があり、
ヨーロッパの経済をけん引する国として、その他の国からの流入人口も多く、
2013年現在では、国内の外国人率は実に19パーセント以上、と、
5人に一人が外国出身の人、という状況になりました。
そんなわけで、文化的背景の異なる人々との交流は、
90年代以降、社会的にも大きなテーマとなっています。
異文化、つまり、文化背景が異なるもの同士が接触することから始まる、
衝突、不安、軋轢・・・
そんなところが映画のテーマにもなりやすいのでしょう。
ドイツ国内に在住している外国人のなかで、一番多いのはトルコ人。
トルコ出自のドイツ人監督ファティ・アーキン監督による
『ソリノ Solino (日本未公開)2002』や、
『愛より強く』(Gegen die Wand, 2004)などは、国・国籍とはなにか、と考えさせてくれる良作。
ドイツでは2009年に、日本では2011年に公開された軽快なコメディ『ソウル・キッチン』も楽しい作品です。
同じくトルコ系ヤスミン・サムデレリ監督の「おじいちゃんの里帰り Almanya – Willkommen in Deutschland」(2011)も、
楽しいながら、しんみりとさせる内容で、
150万人の観客を動員するヒットとなりました。
また逆に、諸外国に滞在してとまどうドイツ人の姿を描く作品としては、
過去にはデトレフ・ブック監督の「セイム・セイム・バット・ディファレント
Same Same But Different」(2009)や、
2014年以降に公開される映画の中でも、
イスラエルに駐在するドイツ人女性の姿を描く、
「ハンナの旅 Hannas Reise」(2013)など、
などもあり、
双方向から異文化を見ることができます。
(この項続く)