2015年
6月
06日
土
ドイツでは、「ヴィネトウ」などのドイツ・ウエスタン映画の主役として知られるフランス人俳優Pierre Brice(ピエール・ブリス)氏が、2015年6月6日にパリの病院で亡くなりました。肺炎をこじらせたとのことです。享年86歳でした。
ピエール・ブリス氏は、19世紀ドイツの小説家カール・マイによる西部劇シリーズの映画化である、いわゆるヴィネトウものと呼ばれる、ドイツ発のウエスタン映画で、アパッチの酋長ヴィネトウを演じて、1960年代に有名になった仏人俳優。
1962年から1968年にかけて、合わせて11作のカール・マイ原作小説の映画が作られました。ブリス氏はそのうち7作において、主役オールド・シャッターハンドを演じたアメリカ人俳優レックス・バーカー、3作においては、同じく主役を演じたスチュワート・グレンジャーとともに、義兄弟の契りを交わしたインディアン、ヴィネトウ役としてカメラの前に立ちました。
その後、70年代~80年代には他の多くの映画作品に出演したり、シンガーとしても活躍していますが、生涯を通じてインディアン役のイメージから抜け出すことはできなかったそうです。
ブリス氏のご冥福をお祈りいたします。
2014年
12月
26日
金
当時まだほとんど無名の女優だったマレーネ・ディートリッヒの、うっとりするような脚線美を世界に知らしめたのが、「嘆きの天使」。
ドイツ初のトーキー映画と言われる本作の監督は、ジョセフ・フォン・スタンバーグ。
新世紀となり、近代文化が花開くドイツを舞台に、ディートリッヒが演じるのは、少々いかがわしい匂いのたちこめる歌劇団の歌姫ローラ。
その退廃的な美貌と、意外と世話女房的な性格に惹かれた、高校で教鞭をとるお堅い教授が身を持ち崩してしまい、哀れな最期を遂げる悲劇なのですが、話の筋はそっちのけで、とにかく当時29歳だったマレーネ・ディートリッヒの魅力に耽溺できる映画です。
歌劇団の歌姫ということで、実際にディートリッヒ本人が本作中で何曲も歌っているのですが、その中でも一番有名なのが、「頭からつま先まで愛でいっぱい Ich bin von Kopf bis Fuß auf Liebe eingestellt (英語版タイトル Fall in love again のほうが有名かもしれません。淀長先生も、英語の歌詞で解説されているようですね)」。スチール写真などで有名な、椅子に軽く腰掛け、惜しげもなく足を見せびらかしながら妖艶に歌う姿で、一躍スターダムにのしあがったディートリッヒ。
他にも、"私はいかしたローラ Ich bin die fesche Lola" "さあ、今夜はいい人を選ぶよ Kinder, heut abend,da such ich mir was aus" など、シャンソン作曲家フリードリッヒ・ホレンダー(Friedrich Hollaender) の手になるノリのいい曲を歌い踊って、ファム・ファタルの地位を獲得しました。
2014年
4月
10日
木
先日、別件でベルリンに行ったついでに、
ドイツ・キネマテーク 映画TV博物館を訪れました。
Deutsche Kinemathek Museum für Film und Fersehen
http://www.deutsche-kinemathek.de/de
2014年
3月
03日
月
TVシリーズ「モナコ・フランツェ Monaco Franze (1982)」や、映画「人はドイツ語を話す Man spricht deutsch (1987)」などで知られる、バイエルン出身の映画監督、ゲルハルト・ポルト(Gerhard Polt)の最新作。
といっても、日本ではほとんど誰も知らない監督さんかもしれません。
作風としてはちょっとシニカルで、語り口がおもしろい、というスタイル。
2014年
2月
09日
日
1981年ヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞。
「ハンナ・アーレント」のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督の作品ということで、
何の前情報なしに観たのですが、いやこれは硬派でまじめな映画ですね。
第二次大戦後、ヨーロッパで「鉛の時代」と呼ばれた1950年代を、
敬虔なプロテスタントの家庭で育った二人の姉妹、ユリアーネとマリアンネ。
物静かで従順な妹マリアンネに対し、
姉のユリアーネは、過激な言動が目立ち、
ギムナジウムでも落第をしたりする反体制派。
異なる個性ながら、学校で見た強制収容所の惨たらしいシーンの連続に、
二人そろって涙した思い出を共有する二人。
やがて、68年運動を経て、社会の価値観ががらりと変わった70年代、
姉妹のそれぞれの人生は、全く異なったものとなっていた・・・・
女性解放運動、自殺、赤軍派、テロリスト、独房、獄死・・・
実在のジャーナリスト、クリスティア-ネ・エスリンの自伝に基づくというあらすじは、
当時の変革期社会の実存の重さを表すキーワードに満ちています。
頑なに自らの信じるところを生きていく妹、マリアンネ役を演じるのは
ハーバラ・スコヴァ。
ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督の一人、
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーに見いだされたのを皮切りに、
本作でトロッタ監督に起用されたのち、
同監督の1986年の「ローザ・ルクセンブルク」、
1991年には、フォルカー・シュレンドルフ監督の「ホモ・フィーバー」、
2009年の「ヴィジョン - ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの生涯
(Vision - Aus dem Leben der Hildegard von Bingen)」
そして、2012年の「ハンナ・アーレント」など、
硬派な作品への出演が多いですね。
そんなスコヴァ出演作品の中で、ワタクシまだ見ていないのですが、
非常に気になるのは、
2008年公開の「カリー・ヴルストの発明 (Die Entdeckung der Currywurst)」。
カリー・ヴルストといえば、ケバブと並んで、
現在ドイツの国民食といっても過言ではないほどの人気を誇るスナック。
そのカリー・ヴルストが、 第二次大戦後、混乱期のベルリンで、
どのように生まれたのかを廻るお話(そしてたぶんコメディ)らしいのですが、
もうそれだけでわくわくしております。
ああ、早く見たい!
はじめまして、ミュンヘン在住のドイツ映画コンシェルジェ、此花朔耶と申します。
2歳ではじめて劇場の大スクリーンで、ディズニー映画「バンビ」を観て以来、特にドイツとはこだわらず、
大の映画好きを自負しております。
大学時代は、8ミリ映画同好会に入って、自分でも映画を撮ったりしたこともあります。
好きが嵩じて、卒論のテーマはなんと、「ドイツ第三帝国のプロパガンダ - 映画の効用」というものでした!
今思えば、ドイツとのご縁はそのときからあったんですね。
当時は、ドイツ映画というと、たまに岩波ホールなどにかかる、暗くてまじめ~な映画、という印象がありましたが、
当地に参りましてから、まじめだけではないドイツ映画の、さまざまな表情に接することができまして、
日々喜びが尽きません。
どうぞよろしくお願いいたします。